ギフトやお土産用の洋菓子の詰め合わせセット食品は、個体の形状やサイズがまちまちな上、シーズンごとに詰め合わせ内容が変わったり、新作菓子が入ったりして、トレイの設計変更が頻繁に行われます。

そのたびに、図面を起こしたりするのは手間なので、洋菓子メーカーの間ではよく、実物の菓子を詰め合わせと同サイズに並べて、「こんな感じでギフトトレイを設計してください」という個体配置による発注が行われます。あるいは、ラフスケッチと実物菓子を手渡す発注などもあります。

いずれにしても洋菓子は、形状が複雑な上、サイズもまちまち、個体の誤差がかなりある食品ですので、一般的な工業製品のように、簡単に図面化できるものではありません。

直線を結ぶような簡単な形状ではなく、不定形な曲線が大半を占めていますので、データ入力にかかる時間だけでも、膨大なものになります。CADでこうした高級食品のギフトトレイをつくろうとすると、とんでもなく高額な見積になるのはこのためです。

一方の木型は、図面作成やデータ入力といった時間のかかる工程は飛ばして、
いきなり試作型づくりに入れます。

しかも手彫りをする職人の頭には、「このクッキーならポケットの深さはこれくらいに
して、テーパー状に彫り込み、底面角はRを付けて仕上げる」といった知見とノウハウが
つまっていますので、CADオペレーターではつくれない試作型を、素早く製作できます。

だからCAD設計が全盛になった今でも、高級食品の詰め合わせトレイは、木型を指定する食品メーカーが多いのです。

発注する側にとっては、実物を並べるだけの簡単な口頭発注で済み、指示が楽なので、
商品の発売日に追われている忙しい時には、たいへん重宝します。
また、ギフト商品の場合たいてい、例えば千円・二千円・三千円といった複数の詰め合わせ
トレイが必要となりますので、できるだけ簡便に発注できる方が喜ばれます。

こうした種々のメリットにより、高級食品トレイの設計に関しては、CADのように
デジタルデータを積み重ねて設計するよりも、ダイレクトに試作型を削り出す、
木型達人の手彫り技の方が、圧倒的に有利なのです。